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「もう1本」その言葉が、私の原動力

  • 執筆者の写真: Miyoko Masuda
    Miyoko Masuda
  • 15 時間前
  • 読了時間: 5分

今回は、友人からの依頼。

実は彼女の所有CASE-1は、これで3本目。


友人 「また、夏用の生地で作ってほしいんだ。」 私  「えっ、もう3本目だよ。」 友人 「だって、夏も履きたいんだもん。」


「夏も履きたい。」

そのひと言が、ものづくりを続ける力になります。



彼女の1本目は、グレーの生地と色落ちしたブラックジーンズを組み合わせた一本。 2年前に数本だけ制作した、ブラックデニムシリーズのうちの1本を購入してくれました。



このブラックデニムシリーズは今はお休み中です。 ここ数年の古着ブームで、状態もお値段も仕入れるという水準ではなくなりました。 私も大好きな組み合わせなのですが、仕方がありませんね。 また製作できる時がきたら、ぜひ作りたい。

だからこそ、あのタイミングで手にしてくださった方は、本当にラッキーだったと思います。




2本目は、ネイビーの濃淡が落ち着いた印象の一本。

ベースになるジーンズも、POP UPでご自身が選んだものです。

背の高い彼女のための、丈を少し長めにしたセミオーダー。




そして今回は、彼女が履かなくなったジーンズを持ち込んでの製作。

セパグラーヴのデニムではないため、持込み料もいただきますが、それでも作って欲しいという気持ちに答え、製作しました。




「履かなくなった一本を、もう一度お気に入りの一本へ。」

それがリメイクLab.を始めたきっかけです。

その人の思い出や時間、この先も一緒に寄り添える一本になればいい。

そんな気持ちで、一着ずつ心を込めて仕立てます。






渡されたジーンズは、やわらかな表情の2000年前後に生産された1本でした。

淡いブルーの軽やかな色合いは若かりし頃の私たちを思わせる、そんな1本。

彼女の想い出と私もリンクさせていただきながら、

ふと私自身の想い出も思い浮かべては笑顔になる、 その時間もまた、リメイクならではの楽しみなのです。





彼女の丈に合わせてパターンを準備し、ジーンズの上に置いてみます。

「ここなら入る。」

そう思っても、もう一度見直す。

少し角度を変えたり、前後を入れ替えたり。

リメイクは、裁断するまでが一番時間のかかる仕事なのです。





配置が決まると、今度はジーンズをほどいていきます。

ポケットを外し、ベルトループを外し、内股のチェーンステッチも一本ずつ。

何本も作ってきたおかげで、以前よりずっと迷いなく手が動くようになりました。

しかも今回の505はパターンとの相性も良く、無理なくきれいに仕上がりそうな予感。



解くのも上手くなったなぁ 最初は指に刺さっていたものなぁ
解くのも上手くなったなぁ 最初は指に刺さっていたものなぁ

チェーンステッチを解く時、うまくいくと糸がピーンと解ける音がして、それがなんとも気持ちいいんですよ。
チェーンステッチを解く時、うまくいくと糸がピーンと解ける音がして、それがなんとも気持ちいいんですよ。

実は今まで何本も解体して解ったことですが、501や505といっても工場が違えば、縫い仕様も変わっているのです。

ステッチの色も違い、針目のピッチ、チェーンステッチの巻き縫い始末かロック始末なのか。ロック糸のかがり幅も全く異なります。


面白いことに、トルコ産は粗い表情。

カナダ産は、細部まで几帳面に仕上げられているものが多い印象です。

ですが、やはりワークスタイルで効率よく、ガシガシ縫製して量産するジーンズは、全体的に粗いもの。

そこが良かったりするのです。



ボタン裏に工場のナンバーが刻印してあります
ボタン裏に工場のナンバーが刻印してあります

再度パターンを合わせ直し、よし、裁断!
再度パターンを合わせ直し、よし、裁断!



裁断を終えたら、次は縫い子さんへバトンタッチ。

気になる点は細かく伝えながら、丁寧に仕立ててもらいます。






約一ヶ月後。

最後の仕上げは、私の仕事です。

検品をしながら、ベルトループやポケット口にカンヌキ止めを入れる。

実はこのカンヌキ止め、一針一針ミシンでジグザグに縫っているのです。

少しだけいびつで、少しだけ無骨に。

工業製品のような均一さではなく、人の手を感じられる表情を残したいから。


一度外部に頼んで入れてもらったことがありました。

綺麗...。 でも、なんか...。 綺麗すぎる? あの均一な美しさも、ひとつの正解だとは思います。

それでも、このひと手間を惜しまないのは、「これでいい」と自分が心から思える一本に仕上げたいから。


ベルトループの狐色の針目の部分をカンヌキ止めといいます。いびつなところも愛嬌
ベルトループの狐色の針目の部分をカンヌキ止めといいます。いびつなところも愛嬌


そして最後に、裾をほどく。

あえて横糸を少しだけ残し、時を重ねた古着ならではの空気感をまとわせる。

新品にはない表情とこのパンツだけの個性が、混じり合う瞬間、一本のジーンズが新しい一本のパンツとして、また彼女の日常と共に歩き始める。



ジーンズの雰囲気に合わせて、ほぐす幅もさまざま。今回はおとなしめ
ジーンズの雰囲気に合わせて、ほぐす幅もさまざま。今回はおとなしめ



軽やかな夏仕様のCASE-1がようやく完成。

「私も一本欲しい。」そんな気持ちになるほどの仕上がり。



箱を開けた瞬間の彼女は、どんな表情をしてくれるだろう。

「夏も履きたい。」と言ってくれたあの日と同じような笑顔を見せてくれるだろうか。



今度会うときは、このパンツを履いて来てもらおう。

その姿を見られるのが、今から楽しみです。


みなさんにも、その日の様子をご紹介できたらと思っています。

どうぞ、お楽しみに。




彼女の想い出とともに
彼女の想い出とともに

柔らかな後ろの生地とのコントラストがまた面白い
柔らかな後ろの生地とのコントラストがまた面白い

前後で全く異なるデザイン CASE-1
前後で全く異なるデザイン CASE-1


ウエストはゴム仕様。ちらりとのぞくネームにアイデンティティを込めて
ウエストはゴム仕様。ちらりとのぞくネームにアイデンティティを込めて

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