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伝統的なブランドの力を借りて modelCASE3-NO.12

  • 執筆者の写真: Miyoko Masuda
    Miyoko Masuda
  • 10 時間前
  • 読了時間: 4分




“普遍”に宿る哲学


長く愛されてきたものには、理由があります。 それは、目に見えぬところにまで手が行き届いていること。あるいは、時代の移ろいに翻弄されず、自らのアイデンティティに忠実であること。





今回手がけたものは、POLO RALPH LAURENのチノパン。 アメリカンカジュアルの中に、洗練と上質を共存させたこのブランドは、長く人々に親しまれてきました。 見えない部分にまで丁寧な仕立てが施されているその佇まいには、作り手の矜持と哲学が宿っています。


再構築に選んだのは、フロントにタックが入っていないストレートフィットのタイプ。 これまで私たちは、タック入りのパンツをベースにリメイクを施してきましたが、着用されたお客様のお姿を見る中で、小柄な方や華奢な方にとってはワタリが太く見えることが気がかりでした。



そこで今回は、その疑問にひとつの答えを。



タックなしのパンツをベースに採用することで、よりすっきりとしたシルエットに。 サイズバランスの調整が難しいリメイクにおいて、着る人の体型に寄り添えるよう、構造から見直してみました。

 

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一本一本のパンツが持つ表情に合わせてパターンを描き直し、無駄を削ぎ、必要な手間をかける。 わたしたちは、そんな静かな対話からリメイクを始めます。 古いものを新しくするのではなく、時を重ねた素材に敬意を払い、その声に耳を澄ますこと。それが、リメイクLab.のものづくりの原点です。




パターンに沿って形を整え、そしてハサミを入れる瞬間——いつも小さな緊張が走ります。


そして解体の途中で立ち現れるのは、ブランドが込めた美意識。 細部にまで宿った哲学に驚かされるとともに、今一度学びの多い対話が楽しい。 素材の声にそっと耳を澄ませながら、新たなかたちへと丁寧に繋ぐ。



パイピング始末にもデザイン性を。美しいですね。
パイピング始末にもデザイン性を。美しいですね。
ネイビーと黄色のネーム。パイピングの配色も合わせる拘り。
ネイビーと黄色のネーム。パイピングの配色も合わせる拘り。

ファスナー持ち出し部分は、トラウザーパンツで見られる天狗。ボタン留めすることで、パンツが下がらない役割があります。
ファスナー持ち出し部分は、トラウザーパンツで見られる天狗。ボタン留めすることで、パンツが下がらない役割があります。

ポケット袋布のプリントはポイントになります。が、今回はフロントのみ利用。
ポケット袋布のプリントはポイントになります。が、今回はフロントのみ利用。
ボタン部分もしっかり補強。どのような仕様も今一度、勉強になる。
ボタン部分もしっかり補強。どのような仕様も今一度、勉強になる。




“記憶”を纏う服




古いものには、記憶があります。 誰かの暮らしのなかにあった時間。

小さな傷や柔らかくなった布地に、その人の歩みが刻まれている。



リメイクLab.では、古着を仕入れたあと、熱湯と洗濯溶剤を使ってゆっくりとていねいに整えるところから始めます。繊維の奥に入り込んだ時間を一度リセットするように、それでも完全には消えない名残が、わずかにとどまります。


けれどそれは、ただの“汚れ”ではなく、むしろこの一着だけが持つ「物語の始まり」。静かに佇むその余白に、次の持ち主の時間が、そっと重なっていくのです。


元オーナーの物語から次のオーナーの時間が重なる...
元オーナーの物語から次のオーナーの時間が重なる...

裁断後は、縫い子さんへバトンタッチ。


 

それでは、デザインの詳細をご紹介しましょう


 

再構築されたCASE-3のデザインは、ビジネスカジュアルから日常のコーディネートまで、暮らしに寄り添うためのデザインです。


フロントのラップデザインは、サイズ調整ができるようボタン留めに。お手間をかけさせてしまいますが、お客様ご自身で身体に合わせて調整することで、より自然なフィットを生み出します。


  

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スラッシュポケットはそのまま利用。
スラッシュポケットはそのまま利用。

コインポケットが特徴的。
コインポケットが特徴的。
ボタンは取り、ウエスト用に再利用。
ボタンは取り、ウエスト用に再利用。
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次に、バックスタイルを見てみましょう

 


使用した生地は、二重織。ふくらみとハリ感を併せ持ち、ヒップラインをやさしく包み込みながら、シワになりにくいという実用性も備えています。


手洗いが可能で、お手入れも簡単。強い脱水は避け、日陰でゆっくりと乾かすことで、生地の美しさをより長く保てます。


後ろ姿には、クラシカルなピスポケット。上下に細いめな玉縁。 ひかえめなディテールと生地が持つほのかな光沢は、ささやかな品格を感じていただけるはずです。



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かつて欧米では、ピストルをいれるポケットだったことから「ピスポケット」と呼ばれるようになった。
かつて欧米では、ピストルをいれるポケットだったことから「ピスポケット」と呼ばれるようになった。


その日一日に、気持ちのいい風を

 

チノパンという素材に宿る多彩な表情に、いまの感性でひとつの輪郭を与えました。 クラシカルな佇まいと、さりげないモダンさ。

どちらの空気も纏いながら、あなた「らしさ」をそっと引き立てる存在になれますように。そして、あなたの一日に新しい風を運んでくれる一本となりますように。




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