伝統的なブランドの力を借りて modelCASE3-NO.11
- Miyoko Masuda
- 4月4日
- 読了時間: 5分
更新日:6月4日
リメイクLab.の仕事は、まだかたちのない出会いから始まります。 古着屋でふと目に留まったこのパンツは、春の光を映すようなオフホワイトのパンツでした。 どんな時代に、どんな人が穿いていたのか—— 想像を巡らせながら、素材の声にそっと耳を澄ませていく時間。 次は、どんな人に、どのように楽しんでいただけるか—— その想像が、リメイクの構想を静かに動かしてゆきます。 今回は、そんなアイテムのご紹介。


“仕立て”に宿る
今回の主役は、Brooks Brothersのチノパンです。 2タックのフロントに、裾はダブル仕上げ。クラシカルなデザインが息づく、<ELLIOT(エリオット)>。 Brooks Brothersは、1818年に創業されたアメリカ最古の紳士服ブランド。 時代を越えてもなお、上質さと規律を忘れないものづくりは、静かな普遍性をたたえています。
このチノパンもまた、見えない部分にまで丁寧に仕上げられており、裏側に潜む縫製の精巧さに、思わず息をのむ瞬間がありました。
パターン、縫い代、そして仕上げのバランス。
そこにあるのは、服に誠実であることの証。
素材が教えてくれることをひとつひとつを受け取りながら、パンツに合わせてパターンをアップグレードさせます。あくまで“今”に引き寄せるのではなく、そこにある哲学を尊重しながら。
ごく自然な変化として新しい佇まいへと導くこと。
手間を惜しまず、心を込めて。

内側の始末まで美しいんです



“記憶”の余白
古着を仕入れたあとは、熱湯と洗濯溶剤で、半日ほどじっくりと浸け置きます。繊維の奥に入り込んだ汚れまでしっかりと落とし、清潔な状態に整えてから、制作へと進みます。
それでも、ごくわずかな痕跡として、元の持ち主の時間が残ることがあります。けれどそれは、この一着だけが持つ“記憶”として、静かに佇んでいるもの。それもまた時間を引き継ぐ愉しみのように...。
解体して初めて気づかされるのは、ブランドが積み重ねてきた構造の美学。 Brooks Brothersのパンツは、目には見えない裏側にまで、緻密な意匠が込められています。
ほどこうとしてもなかなか解けない強靭な糸。
その抵抗に、悪戦苦闘する私。
「新しくする必要があるのかな?」と、心が折れそうになるたびに、
「絶対、素敵に仕上げるんだ」と、自分に言い聞かせながら、もう一度、丁寧に糸を緩ませていきます。そうやって向き合った時間は、きっと、仕上がった一着に静かに宿ることを信じて。
次は、パターンに沿って何度も見返しながら形を整え、慎重にハサミを入れる。
その瞬間、緊張が走ります。もちろん、後戻りはできませんから。
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そして、物語はここからまた新しく始まります。
裁断後は、縫い子さんへバトンタッチ。
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それでは、デザインの詳細をご紹介しましょう
再構築されたCASE-3のデザインは、ビジネスカジュアルから日常のコーディネートまで、暮らしに寄り添うためのデザインです。
フロントのラップデザインは、サイズ調整ができるようボタン留めに。お手間をかけさせてしまいますが、お客様ご自身で身体に合わせて調整することで、より自然なフィットを生み出します。
段差をつけたディテールが、アヴァンギャルドな印象も添えてくれます。
ゆったりとしたわたり幅と深めの股上が、動きやすさと安心感を両立。「穿く」ことに気負わない、けれどしっかりとスタイルを感じる。そんなバランスの良い一本に仕上がりました。




左フロントに引っ掛けが跡が...ご了承ください...
次に、バックスタイルを見てみましょう
バックスタイルには、チノパンに合わせて、やわらかなトーンのオフホワイトを配しました。贅沢な二重織のこの生地は、程よいふくらみとハリ感を併せ持ち、ヒップラインをやさしく包み込みながら、シワになりにくいという実用性も備えています。





手洗いが可能で、お手入れも簡単。強い脱水は避け、日陰でゆっくりと乾かすことで、生地の美しさをより長く保てます。
後ろ姿には、クラシカルな玉縁ポケット。控えめなディテールと、生地がたたえるほのかな光沢が、ささやかながら、確かな品格を感じさせてくれるはずです。
着るたびに新しい自分を
いかがでしょうか?
チノパンという素材が持つ誠実さと余白に、今の感性でそっと光を当てました。
クラシカルな構造を大切にしながら、細やかなニュアンスを重ねることで、装いの中に静かに凛とした印象を添えてくれる一本です。
日常の中のふとした瞬間に、気負いなく穿る。
それでいて、どこか背筋の伸びるような。
そんな一本が、あなたの一日を静かに支えてくれますように。



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